鉢植右から3番目
ある晴れた6月後半の昼下がり、久しぶりに女友達とランチをするために繁華街へ出た。
社交的で仕事が命の友達で、通訳の仕事についていてしばらく海外で勤務していたのが、この度日本に戻ってきたのだった。
「おおお~!久しぶり、奈緒~」
駅前で手と手を取り合ってきゃあきゃあと騒ぐ。小学校から高校まで同じ学校に通った、一番付き合いの長い友達だった。
「変わらないね~!都、元気になったの?その後、上司とはどうよ?」
一瞬くらりと来た。・・・あ、そうだ。彼女が渡英するまでしか話をしてないので、彼女の中では私はまだOLで上司と不倫中なんだった。
「あー・・・ええと。それはすでに遥か以前の話なのよ。今はまた違う環境で・・・」
もごもごと言うと、彼女はキラキラと瞳を輝かせて先を促す。
ここでは無理よ、と嗜めて、色んなことでここら辺では有名なカフェへ移動した。
大きなピクチャーウィンドウがあるこの駅前のカフェは私のお気に入りだった。コーヒーが美味しいし、軽食も出すのがまた美味しい。そして何よりも、その美味しいご飯の全てを提供しているここの店長は、滅多に居ないような美男子だった。
初めは外まで流れ出るコーヒーの香りにつられて入ったのだが、2度目はそのイケメン店長に惹かれて通った俗物な私だ。
だけど誰も責められないぞ、彼は本当に整った爽やかな、そして色気のある男性なのだ!
その時はまさしく不倫中で、一人のご飯が寂しくて夜は8時まで開いているここのカフェに通い、晩ご飯を食べたものだった。
店長の岡崎さん(バイトの女の子に教えて貰った)はいつでも優しくにっこりと微笑んで、寂しさで凍りつきそうな私の心を解凍してくれたのだった。