鉢植右から3番目


 私がその後姿に見惚れている間もずっと奈緒は怖い顔をして私を睨んでいる。

「尋問開始よ、まず、妻にバレて、無傷だったの?」

「満身創痍。だけど、人様のものに手を出した私の負けよね。慰謝料からは逃げられたし。奥様には今では申し訳なさしか感じない」

「泥沼化して、上司は離婚した?」

「うんにゃ」

 奈緒は切れ長の瞳を細めて天井を仰いだ。

「・・・殺してやりたい、その男。はい次!どうして退職したの?」

「妻が会社に電話をかけて不倫をバラし、ファックスもメールも使ってありとあらゆるところに私達の逢引を報告したから」

 今度は拳を固めて口元を強く抑えた。そのまま噛み付きそうな勢いだった。

「うううー!!感情的には判らなくもないけど、それだけ強い女なら自分のダンナを成敗しろよ、先に!褒めるところじゃないかもだけど、よく頑張ったわね、都。―――――はい、次。これが一番問題よ。日本語で、正しくは、契約結婚とは何??」

 私は苦笑をして後ろの席に背をつけた。

 奈緒は前からこんなに真剣な顔みたことないって表情で私を見ている。

 ここで鼻を押し上げて豚の真似なんかしたら間違いなくグーパンチが飛んでくるんだろうな。

 仕方ないからまともに答えた。彼女の指にはジャラジャラしたアンティークのごつい指輪が嵌っている。あれで攻撃されたら目も当てられない顔になるだろうし。


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