鉢植右から3番目
「お互いの利益が一致したので、結婚することにしたの。ただし、実情は同居人。経済的にも家事的にも折半している。だけど、夫婦生活はなし。未だにお互いのことはほとんど知らない」
すうっと息を吸い込んで、奈緒が私を睨みつけている。
「相手はどんな人?私が知ってる人なの、もしかして?」
私はにっこり笑った。
「漆原大地って覚えてる?奈緒もずっと一緒だったでしょ、小学校から高校まで」
ぽかんと口を開けて、奈緒が目を見開いたままで完全に静止した。
私はそれを面白くマジマジと観察する。
何度か口をパクパクと開けては閉めを繰り返していたけど、一度唾を飲み込んで、叫んだ。
「漆原だとっ!??」
私は慌てて口に指をあてて見せる。彼女はハッとして周りを見渡して声を潜めた。だけど、猛烈な勢いだった。
「ちょっと都お~!!漆原?漆原大地!?一体どうして結婚話に?私が知らなかっただけで実は付き合っていたとか?それともお見合い!?」
若干私は驚いた。
奈緒が漆原大地と聞いてすぐに反応したからだ。だって、私は母親に言われた時も全くピンと来ず、誰それ?って聞いたくらいなのに。
「・・・まあ・・・お見合いっちゃお見合い、かな。つか、どうしてその反応よ、奈緒?ヤツのことよく知ってるの?」
その時素敵なランチが運ばれてきて、興奮した奈緒に時間を与えてくれた。