鉢植右から3番目
ヤツは余りにも淡々と飄々とした男で、性欲が沸かないから、なんです。
きっとヤツ本人にアレに対する興味が薄いかないかで、色気がないのだ。そうだそうだ、きっとそれだ!
色気がないから惹かれない、なので私からも色気が出ない。これだ!
雷がぴかっと光ったかのように、突然はっとした私だった。
――――――――色気・・・。それって、どうやったら出るの?
思わず地面にしゃがみ込んで考え込みそうになってしまった。後ろから来たチャリが突然止まった私に舌打をして通り過ぎたからそれはしなくて済んだけど。
ええ~?そんなの考えたことねーよ、当たり前だけどよ。
大体、今恐ろしいことが頭をよぎったぞ!
私が一大決心をして、やつに夜這いをかけたとする(夜這いだって!きゃあ~!)、ところがヤツは軽くそれをスルーして、普通に爆睡しそうじゃない!?
そんな場面でも「面倒臭い」とかいいそうじゃない!?
そんなことになったら恥かしさと悔しさから死ねる。絶対死ねる。それはバカな私でも判る。
・・・・奈緒・・・・無理。自分から襲うなんて、プライド以前に恥かしくて無理。
それで失敗したら、痛い痛い女になるだけでなく、今のこの居心地のよい生活も失うではないか!・・・ああ、恐ろしい・・・。
2ヶ月半とはいえパート主婦の生活を堪能してしまった私は、今からあのハードな独身現実生活に戻れるだろうかって考えるだけでも真っ青になる。うわあ~!ヤバイ!こうならないようにと就活だって続けてきたはずがっ!
帰り道、夕焼けに染まる真っ赤な路上で、私は一人でのた打ち回っていた(外見は普通だったはずよ、多分)。
どうしよう・・・どうしたらいいんですか!神様!!
そして考えはまとまらず、がっくりと肩を落としてとぼとぼと帰宅したのだった。