鉢植右から3番目
私はそれを見下ろす。夏から秋に咲く花なので今から楽しみに育てている、サルビアだ。
「・・・どうしてこれ?」
他にも鉢植はたくさんあるし、それで言えばこの棚の背面にフックを取り付けて鍵を吊るしてもいいよね、と思ってヤツを見上げる。
するといつもの興味なさそうな顔で、だら~っとヤツが答えた。
「尊敬・燃える心・知恵・家族愛・恋情」
「―――――は?」
ドアを開きながら、玄関灯の光に照らされた彼が口元を上げて少し笑った。
「サルビアの花言葉だ。知恵、の所がぴったりだろ、合鍵置き場」
・・・・おお。花言葉だと?そんなしれっとした顔してよく知ってらっしゃいますね。驚いて、つい心の中で拍手した。
良くも悪くも侮れない野郎だ。私は知らなかったぞ、サルビアの花言葉なんて。
振り返って、鉢植を確認する。ええとー・・・二段目、右から3番目のサルビアね。オッケー。
玄関灯に照らされて少しだけ蕾の出ているそれが、風で揺れた気がした。
私も笑って玄関に入る。
合鍵置き場だって。
・・・何だか、家族みたいだ、そう思ってしまった。