鉢植右から3番目
イライラと周りを見渡し、そうだ、とりあえずこのワンピースを脱いでこようと思いついた。
そうよ、都。気を落ち着けて、それでそれで・・・肌見せに、エプロンとか・・・。
思わず考えてしまった。色気の出る服装はあるかって。
とりあえず、手元が怪しいので包丁を置いて自室に引き上げた。
普段、エプロンなんてしない私だ。それでも母親がもたせてくれて、法事のときに役に立ったエプロンがあるし・・・もう、ほとんど夏だし・・・肌見せたって、問題なし・・・よね?
勝手に色々考えて訳判らなくなって、うおおおお~!とベッドに寝転んでジタバタしたあと(こんなところ誰にも見せられない)、結局短パンとタンクトップの上にエプロンをつけた格好で部屋を出た。
戦場に向かう兵士の気分だった。厳密にはそんな極限状態になったことないから判らないんだけど。ま、気持ちの上でってことで。
パタンと自室のドアを閉めて、スタスタと歩く。右手と右足が一緒に出そうだった。・・・この短い距離で転んだら、真面目に不審者だぞ、私。やつの視線を感じたいけど見てないことが悲しくも判る。
それを気にする自分が嫌だった。
深呼吸をして大根を刻む。とんとんとんと音を立てて。必要以上に切ってしまった。
後ろは静か。ヤツは別に音楽もテレビもつけない。私が喋ってないと部屋の中はめちゃくちゃ静かだ。いつもなら気にならないその静寂が、今日はやけに敏感に感じてしまう。
しっずかっなこっはんのもーりのかげーから~♪
頭の中をどうでもいい童謡がいきなり流れ出す。いっそ大声で歌ってやろうか。いやいやいや、大丈夫なのかこの女、と思われるのがオチだから止めておこう。