鉢植右から3番目
小船、見事に大破~!!
ヤツはニコニコしていた。そんな機嫌のよさ気な顔は初めて見た。だけど物凄い敗北感を味わっていた私は引きつった笑顔で頷いた。
・・・おばあちゃんと一緒・・・。ああそうかよ。
エプロンと自然に露出した格好作戦、失敗。
その日から、私は一生懸命になった。実らない就活(結婚しているとわかったら、どうせすぐ子供出来るんでしょって露骨なことをいわれて採用してくれない企業の多いこと!)をするよりも、奈緒の言う通りに名実ともに漆原家の嫁になった方がいいと思ったのだ。
初めは、変な男だと思った。
その内、静かな分邪魔にもならず、ただ単に変人だと思うのは申し訳ないと思うようになった。
そして今では、ヤツと契約結婚したのは自分の最大のチャンスかも、と思うようにはなったのだ。
相変わらず自発的には何もしない男ではあるが。しかし自立した男であったため、同居人としては一級品だ。
あっちが私のことをどう思ってるかは知らない・・・というか、わからない。同居を始めて4ヶ月になるが、やつの態度は春先から変わらないのだ。
でも、奈緒に会った6月末から、私は少しずつ変わっていった。
ヤツを、男として意識しだしたのだ。
まだベタ惚れとはいかない。だけど、二人でいる空気になれてしまったし、よく周りを見るが為に自分を一歩引いた所に置くことも、言葉が少ない分気付かれない範囲で手助けをしてくれていることなんかもわかってしまった。
それにそれに、ヤツは素敵な体をしている。力仕事で鍛えられた体、体毛はそんなに濃くないし、それらは完全に好みの範疇に入っていた。