鉢植右から3番目
2、違う涙。
誕生日を翌日に控えた7月31日、4個目の面接に落ちて、私は凹んでいたのだ。
やっぱり正社員って難しい~・・・。そりゃあ選ばなければ何でもあるんだろうけど、深夜働くなら約束したご飯が作れないし、早朝も同じ理由で出れない。9時から5時の正社員ならやっぱり若い子を雇いたいのは企業としては当たり前だろうし、今日もまた言われたのだ。
「仕事に就いて、すぐに妊娠しましたって言われても困るんだよね~」って。あなたくらいの年齢の女性なら、有り得るでしょ?だと。
引きつった笑顔で固めながら、私は心の中で荒れまくっていた。
やることしてませんから絶対妊娠はしません!努力はしてますがどうしてもベッドインに持ち込めないんです!なんなら夫から証明書貰ってきてやるよ!って。見えないナイフで面接官を滅多刺しにしてやった。
いっそのこと妊娠出来ない体質なんですって言ってやろうかと思った。あんたらの言葉はセクハラ以外の何者でもねえんだよ!って警告をこめて。机の上のマジックを手に取って、頬の所に「傷付きました」って書いてやろうか。全く。
私はにっこりと笑って、軽やかに言った。
「妊娠しませんって誓約書でも書きましょうか?それで仕事をいただけるならやりますが」
相手のオヤジは気まずい顔をして黙った。
やった、勝った。だけど――――――――
勿論、面接には落ちました、っと。
薄暗くなった自分の部屋の中で、面接用のスーツから着替えもせずにごろごろと転がっていた。