鉢植右から3番目
髪の毛で酷い顔は隠し、背中を向けてベッドから降り着崩れを直す。
「――――帰ってきて、疲れて寝ちゃったの。ごめんね、ご飯作らなくて」
さて、化粧も落としてないわ、私、そう言いながら、パジャマを持って部屋を出る。
恐怖と驚きで眠気はすっかり取れてしまった。一人暮らしのときでもあんな怖い経験したことない。良かった~、今一人暮らしじゃなくって。
ヤツは無言で後から出てきたけど、私を見ているのが判った。背中に視線を感じていた。
振り返らずに、私は言った。
「起こしちゃってごめんなさい。お風呂入るから、どうぞ寝て下さい」
顔を見たらまた泣いてしまいそうだった。今晩の私は涙腺が緩すぎるのだ。振り返るなんて、そんな勇気も元気もなかった。だからそのまま進んで、洗面所に飛び込んだ。
追い炊きをして、ゆっくりとお湯に浸かる。
はあ~・・・・。
盛大にため息をついて、思わず顔を顰める。
うおっ!おっもいため息だよ、今の。ため息も重力の影響を受けるのだろうか。沈みそうな重いため息だったぜ、さっきの。幸せが逃げる幸せが。吸い込んどこ、今の空気。
手のひらにお湯をすくっては流す。それをじっと見ていた。
・・・幸せか。一体何が幸せなんだろう・・・・。湯気で白く輝く浴室で、私は天井を見上げてぼんやり考える。
明日のご飯の心配をしなくていい。・・・幸せだよね。
雨露凌げる家がある。・・・幸せだよねえ。
健康な体もある。・・・幸せだぜ、それは間違いなく。
だけど――――――よりかかる、腕がない。胸がない。手をのばせる場所がない。