鉢植右から3番目


「子供を産めなくなるまで」

「――――――具体的には?」

 眉間に皺が寄ったのが自分で判った。何が言いたいんだ、この男は。

「人によって違うわよ。でも・・・そうね、50歳過ぎとか、そのくらいじゃない?」

 はあ~・・・と盛大なため息が聞こえた。

「・・・面倒臭い・・・」

 ムカつく~!イライラするのも面倒臭いのもこっちであって、おまえじゃねえだろ!と怒鳴りたい気分だ。毎回毎回下着にナプキンを貼り付けなければならない面倒臭さは野郎は知らないだろうがよ!

 でも怒鳴る代わりに私は言った。

「その期間を縮めるには、妊娠するしかない」

「うん?」

 ヤツは定位置の座椅子にいつも通りにだら~っと座り、私を見上げた。何?と顔が言っていたから、私は真っ直ぐ見詰めたままで言った。

「妊娠そして出産かつその後はしばらく生理がないってことよ。ねえ―――――」

 一度言葉を切って、唾を飲み込んだ。

 怒りは急速に冷めていって、かわりに緊張感が私を襲う。・・・・これは、チャンスだ、そう思ったのだ。

 ここで、ヤツの考えが聞けるかもって。

 座椅子からだるそうに私を見上げているヤツに言う。

「あなたは、実際のところ、子供についてどう思うの?」


< 96 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop