鉢植右から3番目


 私はぽかんと口を開ける。・・・・え?今、好きにしたらって言った?それっていいよってこと?それとも――――――ええ??

 私が唖然、かつ混乱しているらしいと見たか、ヤツはわざわざ言い直した。

「産みたければ産めばいいんじゃないか?35歳までに」

 目が点になった。

 産めばいいって・・・だって・・・一度だって、抱かれてないけど??

 あれ?こいつ、もしかしてシングルマザーになりたがってるなら好きにすればって言ってんの?だとしたら意味が大いに違うでしょ。俺は関係ないって言ってるってことになるがな!

 種馬にはなるってこと?それとも他の男と好きにしろってこと?

 突然、頭の中に小学校4年のときの担任だった、玉本先生の言葉が蘇った。

 彼女はいつも言っていた『人の話をよーく聞きなさいね。そうすれば、相手が何を言いたいかがすぐに判るようになるから』って。

 私は今、全身全霊でヤツに意識を集中して聞いていた。

 だけど先生・・・私、あの男の言いたいことが判りません。

 まーったく、判りません。

 何とか開けっ放しの口を一度閉じて、それからゆっくりと私は言った。

「やることしなきゃ妊娠なんて出来ないでしょう!」

 妊娠は一人では出来ないのだぞ!

 ヤツは更に首を傾げた。ううう~そのままへし折ってやりたい。

 へし折ってもいいですか、と聞いても、好きにしたらって言いそうだ。

 ヤツはうんざりした顔に、だるーい、と文字を浮かび上がらせたまま言った。


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