Smile
プロローグ
「ああ……しまったなあ」
土砂降りの雨の中、俺は学校の下駄箱の前で呆然と立ち尽くしていた。
傘を持ってくればよかった。
部活が終わり、時刻は20時。
こんな時間まで残っているのは、先生以外 俺くらいしかいない。
バスケ部のキャプテンである俺は、部員全員が帰るのを見届けてから仕事を済ませて帰るところだった。
ちょうど帰ろうと思った瞬間、雨が降ってきたのだった。
「………走って帰るか」
それは、俺が土砂降りの雨の中に走って行こうとした時だった。
「あの……これ、よかったら使ってください」
後ろから声を掛けられ、俺はびっくりして振り返った。
「え?」
そこに立っていたのは、俺に向かって折りたたみ傘を差し出す女の子だった。