Smile
その瞬間、何だか胸が熱くなってドキドキする。
なんだ、どうしたんだ俺。
自分の体が妙に熱を帯びている気がして、なんだか変だった。
「ピアノ、好きなの?」
このままこの場を去るのが何だか嫌で、俺は彼女に話しかけた。
……正確にいえば、彼女と一緒にいたかっただけかもしれない。
彼女はゆっくりと頷いた。
「ピアノを弾いていると、心が落ち着くの。余計なことを何も考えなくていいから」
「へぇ………」
俺には分からないけれど、彼女にとってはピアノがとても大切な存在なんだろうと思った。
「なんで私がここにいるって分かったの?」
「それは………船橋さんに、教えてもらった」
「ああ……七海かぁ。ふふっ」
その時の彼女の笑顔が、綺麗で、可愛くて、俺も自然と頬が緩んだ。