Smile
「じゃあな………あっ…そうだ」
俺は扉に手を掛けて、もう一度振り向いた。
「ここ、また来てもいい?」
「え?」
なぜか分からないけれど、また来たくなった。
彼女はまっすぐ俺を見て頷いた。
「私も、また来てほしい」
彼女はそう言ってにっこりと笑った。
「さんきゅ」
彼女のピアノが、聞きたいと思った。
花が咲いたように笑う彼女の奏でる音はどんなものなんだろうと。
俺はそう考えながら音楽室をあとにした。