Smile
「蒼太(そうた)、おかえり! ………ってなにその傘? あんた、彼女でもできたの?」
リビングから出てきた母さんが、俺がいかにも女物の花柄の傘を持っているのを見るなり叫んだ。
「いや、違うって。彼女とかじゃなくて、たまたま会った女の子が貸してくれて……」
あれ?
ちょっと待てよ。
この傘、どうすりゃいいんだ?
俺、あの彼女の名前すら知らない。
そう思った時、俺は傘に何か書いてあることに気付いた。
「あ」
『高野 すみれ』
傘の持ち手の部分に、きれいな字でそう書いてある。
俺はそれが彼女の名前なんだと理解した。