紅いクチビル
「銀の十字架のネックレスって、俺があげたヤツだよな。」
確かに、そうだよ?
だって、いつもつけてるもん。
肌身離さず、つけてるもん。
「確かに、疑われても仕方ないかもしれないけどさぁ…
普通、彼女の発言くらい信じるんじゃないの?」
あたしの声、震えてる。
当然か、泣くの我慢してるんだし。
「俺だって、信じたい。
でも、信じられる材料がどこにもないだろ…!
逆に、お前を疑わざるを得ない材料ばかりで…!」
奈津は、材料がなきゃ信じてくれないんだ。
「違うよ、あたしじゃないよ!?
信じてよ、奈津…!」
「……っ」
奈津はあたしと目を合わせようとしない。
「薺ぁっ…!」
薺もあたしから目を背ける。
「鱗…っ!」
鱗まで…
「冬馬君…!!」
冬馬君は…そもそも前髪に隠れて見えない、けど動揺してるのはすぐ分かる。
誰も、信じてくれない。