紅いクチビル
どんなに関係ないことを考えようとしても、無駄で。
さっきの言葉が、思い出すたびにあたしを突き刺す。
何度も、何度も。
「嫌われた、のかなぁ…」
あたし、なんにもしてないのに。
どうして?
なんで嫌われなきゃいけないの?
奈津が好きなのに。
大好きなのに。
「でも、奈津はあたしのこと本当の意味で好きじゃなかったんだ。」
好きだったら…信じて、くれるもんね。
あぁ、なんか頭、ボーッとしてきた。
身体の力が、フッと抜ける。
倒れるなぁ、と思いながら重力を身体に感じていた時、不意に誰かに支えられ、あたしは倒れずにすんだ。
「おっ…と」
誰…?
顔を上げて支えてくれた人の顔を見ようと思ったけど、あたしの力はすでに限界だったらしく、徐々に意識が遠のいていった。