紅いクチビル
「気に食わないな。
どうして逃げようとしないんだ?」
「…」
「しょうがないんじゃない?
こんな目してるし。」
「…確かに、それどころじゃない、か。」
それどころじゃない…?
あたしの、何を知ってるって言うの。
「西條明良、17歳。
現在高校2年で澤田奈津と一応交際中。
学力はそこそこ、運動はできる方…か。」
「…調べたの?あたしのこと。」
「これも、驚かないんだねぇ。」
冬馬君、そういうのやってたから。
「可哀想にな。
恋人にまで信じてもらえずに。」
なっ…なんでそこまで知って、
勢いよく顔を上げた瞬間に、びっくりした。
目の前にいる2人の男の人は、両方とも顔が整ってるということ。
それと、あたしのことを可哀想にと言った人が、笑っていること。