紅いクチビル
裏切り者 奈津side
◇◆奈津side◇◆
屋上を後にした俺達は、教室に戻った。
俺達はみんな同じクラスだ。
隣のクラスが、明良のいるクラス。
今はちょうど、休み時間だった。
《違うよ、あたしじゃないよ!?
信じてよ、奈津…!》
明良の言葉が、頭の中でぐるぐる回る。
信じたい。
今更そんな思いが、こみ上げてくる。
は、俺もつくづくバカな男だ。
俺を、俺達を裏切った女なのに。
まだ、好きなんて。
「奈津君…ごめんね、愛莉のせいで…」
愛莉はそう言って涙ぐんだ。
愛莉のせいじゃない、あの女が悪いんだ。
愛莉が泣く必要はないのに。
「愛莉のせいじゃない。
さっきも言っただろ?」
「でも…愛莉が、奈津君をとったから、明良ちゃんはあたしのコト恨んで、それで…」