紅いクチビル
どこまで本当なのか。
名前だって、嘘かもしれない。
…まあ、いいか。
この人たちは、あたしに職と“復讐”という生きる糧をくれた。
名前が嘘でも、呼べるだけでいっか。
「…黒江さん、真白さん。
これから、お世話になります。」
「…他人行儀だな。」
「他人ですから。」
復讐、という言葉で縛られた、他人の集まりだ。
「…ほう。
俺が最初に教えようと思っていたことが、すでに出来ているとは驚きだな。」
「…?」
最初に教えること?
「自分の感情を殺すことを覚えろ、と教えるつもりだったんだけどな。」
「基本中の基本だからね~。」
「成る程、早速あたしは一歩進んだわけですね。」
「…まあ、そうなるが。」
黒江さんは、突然あたしを抱き締めた。