紅いクチビル


「分かりました。
着替えるんで出てってください。」

「わかってるよ。
誰もお前の身体なんか見たくねぇからな。」

「いちいちうるせぇですよ変態。
余計なお世話です。」

「だから挑発に乗るなって。」

「さっさと扉閉めてください。」

「ハァ…5分後にリビングでコースを説明する。
遅れたらしない。
さっさとしろよ。」

バタンッ

「ふー…」

あたしは扉が閉まると同時に、静かにため息をついた。

…これから、この生活が続く。
早く慣れなくちゃ。

でも着替え、あたし持ってきてないんですけど。

あたしが寝ていた部屋のクローゼットを開けると、真っ黒なジャージが一着入っていた。

「用意してくれたんだ。
それはありがたいけど…さすがにこれだけで生活しろなんて、」

言いそう。

言いそうだから怖い。

「…家に、服を取りに行こう。」

せめて、スウェットやTシャツくらいは必要だから。

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