病み彼女との恋愛
「え?

いいんですの?」

「ああ、どうせ鍵閉める仕事があるしな。

確認もしなきゃいけねぇし」

「それなら……入りたいですわ」

「じゃ、入るか」

音楽室の鍵を開けると、音楽室の独特の匂いが俺の鼻孔をくすぐる。

……埃っぽいな。

また掃除の担当のやつらサボったな…

流石にそろそろ注意するか。

ポロン。

綺麗なピアノの音が響いた。

「あら、鳴るんですのね。このピアノ。」

「お、おい?

あまり構うなよ?」

「ええ、ちょっと弾くだけですわ」

そう言ってピアノを弾きだす。

……そういえば、ピアノ得意だったよな…

「ふぅ。

久し振りに弾いたので、なんか変でしたわね」

「そうなのか?」

「ええ。

転校してからは弾く暇さえもありませんでしたので」

え?

転校してからは?

まさか…

「お久しぶりですわね。

…聡さん。」

「……清水…お前……」

気付いて……

驚いたような表情をしている俺に対して、ニコニコと嬉しそうに微笑んでいる。

「会えて嬉しいですわ。

聡さんに会うために此処に転校して来たのですが、まさか聡さんと同じクラスになれるだなんて。

嬉しいですわ。嬉しいですわ!」

「清水……」

「嫌ですわ。[清水]だなんて他人行儀。

昔みたいに…[小毬]と呼んでくださいまし」

ふんわりと微笑む清…小毬。

小毬……か。

久し振りに呼んだ気がする。

昔は、[小毬ちゃん]って呼んでた気もするが、流石に今[小毬ちゃん]って呼んだら引くわ。

「お前は覚えていたんだな。

俺のこと。」

「ええ。

聡さんのことを覚えていないはずないんですもの。

聡さんがくれた私宛ての手紙のおかげであの地獄のような場所から絶えて、堪えて、耐え続けることができたんですもの」

「小毬…?

地獄のような場所って……」

「あら?

言い過ぎてしまいましたわね

気にしないでくださいまし」






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