病み彼女との恋愛

悲秋


「…俺は高校進学と同時に遊樹を連れてこっちに来た。

元々此処は俺のいた街だったしな」


「…………尊さんも…」


「ん?」


「…遊樹先輩も……


辛い想いしたのに…その人のことを愛し続けれるんですね……」



さっきまでの真面目な顔から、少し楽になったような顔に変わる。


「……まあ…最初は受け入れたくなくて……だったんだけどさ。

時が経つと『ああ…もう逢えないんだ』ってなってくるんだよ

やっぱりさ、どれだけ自分に言い聞かせても最初は『アレは夢だった』って思っちゃうからさ……」


「…………俺は…」


「…お前のお母さんの話は真希ちゃんに聞いてる


多分同じだろ?」

「……………………」


母さんが死んだ時…


最初は家に帰れば晩ご飯の準備しながら待っててくれてる…とか……

行事にも来てくれるかな…とか……





確かに尊さんと同じだ。


誰だって、分かってても最初は受け入れられない。

今までの思い出を現実と重ねて見てしまう…



俺が母さんは死んでるって…ちゃんと受け入れられたのは……どうしてだっけ……?


「小毬の事も知ってる

知ってる事をお前に隠してたのは…知った時にお前があいつから離れて行ったら今度こそあいつが……


『壊れる』



そう思ったから……


悪かったな。

黙ってて…



でも、



一つだけいいか?








俺らは咲紀、由莉の件であいつに嫌われてる。


だから…俺らは側で守る事は出来ない。


聡。


お前があいつを守ってくれ。


お前は…あいつの事が好き…なんだろ?」
< 70 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop