…だから、キミを追いかけて
俺に付き合え
テントへ戻ると、澄良達は片付けを終えて祝杯を上げていた。

「おかえりー!用事済んだー⁉︎ 」

楽しそうに手を振る。

「うん。ごめんね、急に逃げ出して……」

テントの屋根をくぐると、海斗さんにビールを手渡された。

「一杯飲もうや!夕夏ちゃんもお疲れ!」

コツン…と缶をぶつける。

星流が笑っている。
その横で、佳奈さんが疲れ果てていた。

微笑む澄良の横に、見慣れないハッピを着た人がいるーーー。


「……波留?」


久しぶりに会ったような気がしていた。
あの港で別れた日から、一週間も経っていないのに。

赤い消防団名入りのハッピを着た人が振り向く。
灼けた肌の色が赤っぽく見えるのは、熱気に包まれていたせいだろうか。


「よぉ…」

声が疲れきっている。
余程、神経を使ったのか、少しぼんやりしてるようにも見えた。


「お疲れ。消防団員だって、今日知った……」

普通に会話しだす。けんか腰でもない。大人としての会話。

毒が抜けた気がする。……きっと、さっきのキスのお陰だ。


「海から見守る花火ってどんななん?やっぱり丸く見える?」

側に近寄って、疑問を投げかけた。
惚けた感じの波留が、ビールを飲みながら呟く。

「丸く…ってゆーか……球?頭の上から火花落ちてくっから、気が抜けねーけど…」

火薬玉の欠片も降ってきたりするんだそうだ。

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