…だから、キミを追いかけて
祖母の心配そうな顔が頭に浮かんだ。

母の仕事場を出たのは午後8時過ぎ。
そこから一体、何処へ行ったのか…ってことになっている。きっと。


「やばっ!私帰る!!」

立ち上がってテントの外へ向かおうとした。

「待てっ!」

波留の手が止める。

1度ならず、4度も。勘弁してよ。


「何⁉︎ 私困るんやけど。昨日、家に帰らんまま、ここへ来たから」

事情説明しに戻らないと、きっと祖母はまた気に病む。

「お前んとこには連絡が入っとる!キヨが昨夜のうちに電話しといたってLINEに入っとった」

「澄良が⁉︎ 」

少しホッとする。
良かった。それなら大丈夫だ。

「お前、お嬢か何かか⁉︎ そんな年にもなって、家のもんに心配されるやら」

手を離して立ち上がる。
背の高い波留には低すぎるテント。
頭の上に張り巡らされた支柱を気にしながら言葉を返した。

「違うよ。ここんとこ体調悪くて、おばあちゃんに心配ばかりかけとったから」

「へぇー。二日酔いか何かか?」
「違うわ!そんなヤワな理由じゃなぁ!」

ムキになって言い返した。
波留の目が、一瞬、私を捉える。


(まずっ!いつものパターンに……)

ヒヤッとする様子を無視するかのように、波留がさらりと受け止めた。

「二日酔いでなけりゃええ。女の深酒なんか、カッコ悪いだけや」

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