…だから、キミを追いかけて
売り言葉も買わず、あっさりとテントから出て行く。
拍子抜けするような態度を見せられ、ポカン…としてしまった。

歩き出す背中が離れていくのに気づき、大慌てでテントを出ていく。

目の前に広がる砂浜には、昨夜の人混みでできた足跡と、祭りの賑やかさを物語るようなゴミが散乱していた。
湾内の海水は深い緑色を湛え、陸に向かって押し返すような波が寄せている。

眺める視界の端に、テトラポットが映る。
暗闇の中で交わした最後のキスを思い出し、きゅっと胸が迫った。



今日からは「独り」……

前を向いて生きなければーーー




「……頑張ろ…」

短く呟いた言葉に波留が反応する。何かを言いかけようとした口元を眺め、はっ…と気づいた。


「あのさ、もう少し肌を労った方がええと思うよ」

日焼けした肌をそのままにしてるやろ…と突っ込んだ。

「そのままにしてると早く老化するよ。灼き過ぎには気ぃつけんと、歳取ってシワだらけになるから」

お節介なことを言っている。
自分が言われたら嫌なことを言うなんて、私にしては珍しい。

「澄良に言われたことない?そういうの」

旦那さんの海斗さんの肌を思い出した。
灼けてるけど、綺麗にしている。
あれは澄良のアドバイスがあるから、ちゃんと手入れされているんだと思う。

「キヨがそんな事言うか!誰のもんやと思っとんだ!」

誰のもん…?

澄良は……

< 106 / 225 >

この作品をシェア

pagetop