…だから、キミを追いかけて
はい…と掌に乗せられる。

水色の箱に入った物は、きちんとリボンまで掛けられていた。



プレゼントだと、咄嗟に気づいた。
母にこれを渡した人は、最初からそれを目的としてここへ来たのかもしれない。

「へ…へぇー…何やろう…後からのお楽しみにしよう!」

辛うじて声を震わさず、お風呂場へと急いだ。

脱衣カゴの中に着替えと一緒に入れる。中身が気になって、そ…と開いた。



ピンク色のドロップ型の小石が光る品のいいピアスは、私が前に欲しい…と言っていた物だった。


『Happy Birthday』

短いメッセージ。
それ以外は何もない。
あっても昨日、全部言い尽くしたから。


(航……ありがと……)


最期のプレゼントは彼からの思いやり。本当に最後まで、礼儀正しい人だったーーー。





(ーーーだからって、こっちと比べる訳やないけど……)


呆れ顔で眺めてるのは隣で居眠りしている人。
私が遅れたのはたったの5分。だけど、この人はさっきから30分もこの姿勢。

「…あのさ、付き合えって言ったのそっちよね⁉︎ なのに何⁉︎ その態度」

起きなよ…と身体を揺すった。寝起きが悪いだか何だか知らないけど腹立つ。
これで起きないなら、今後一切付き合わない!


「波留!起きて!起きてったら!」

屋外のベンチで居眠りなんて、紫外線まともに受けて大変だって!

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