…だから、キミを追いかけて
ついでに言うならマスカラだってしなかったよ⁉︎ グロスも薄く塗ったし、ツケマだって付けてない。
確実にスッピンに近い。
だから本当は凄く恥ずかしいんだ!


じぃ…と顔を眺められる。睨みつけるような目の色はやっぱり薄い茶色だ。


「……悪りぃ、言い過ぎた……」

ベンチから足を下ろす。
はぁー…と深い息をついて、波留は缶コーヒーを飲み始めた。


「ねぇ、私を連れて行く場所ってどこ?町内?」

田舎もんの格好でって指定だから、そうなのかなと思った。


「まあいろいろ。故郷再発見みたいなもん」
「再発見⁉︎ どういうのそれ」
「行けば分かる。……頼むからちょっと黙っとってくれ。頭に響く…」

缶を持つ反対の手で、こめかみを押さえている。

頭痛⁉︎
そっか。この人、見た目より血圧低いんだ。


(人の命を守る役目の人が低血圧なんて……おっかしー)

くくく…っと笑いを噛みしめる。
隣でコーヒーを飲んでいた波留が、不機嫌そうにこっちを向いた。


「お前は呑気そうでええな。あんな格好で寝て、寝不足やないんか」
「寝不足よ。でも、今日はちょっと気分いい!昨日が誕生日でいい事もあったし」

耳元で揺れるピアス。
これをくれた人との別れは、きっといい方向へ進むと信じている。

「誕生日⁉︎ 昨日やったんか⁉︎ 」

驚いた様な顔された。

「うん。そうやけど」

27歳。私もいい年になったってこと。

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