…だから、キミを追いかけて
改めてそう思う。


「ありがとう……波留……」


素直な気持ちでお礼を言った。

「連れてきてもらって、本当に良かった」


新しく歩き始めた最初の日に相応しい場所。
ここへ来たこと、多分一生忘れないと思う。


「なんか知らんけど…お前やっぱ今日、変」

波留が呆れた。

「変で結構!元々こんななんよ。私は……」

妊娠してからこっち、ずっと自分らしくなかったの。

初対面の日から昨日までの自分が、自分らしくなかっただけ。


「なんか文句ある⁉︎ 」

睨まれてるみたいな気がして聞いた。
頭一つ分上から見下ろす波留の視線が逸れる。

「いんや…別に。えーんやないか。今日の夕夏、俺は結構好き」

「えっ…⁉︎ 」

ドキッと胸が鳴った。
波留の発した一言に、過敏に反応してしまった。


「あっ、今の特に意味ねーから!」

付け足される言い訳。

「知ってるよ!」

波留が好きなのは澄良で、高校時代からの私の友人で、海斗さんの妻だってこと。


…だけどね……


(片想いするには……辛過ぎる相手だよね…きっと……)


ポンッ!と二の腕を叩いた。

「波留、私、あんたのこと、好きでいてあげるから!」
「はぁ⁉︎ 」

逸れていた目線がこっちを向いた。

「どんな時も、好きでいてあげる!だから、元気だそっ!」
「何やそれ⁉︎ なんで上から目線⁉︎ 」

「あはっ、そうだね。まぁ…経験者は語るってとこよ!」

同棲も妊娠もまだ未経験でしょ……って、心の中で呟いた。

波留が「何だよ、それ」と聞きたがる。


……だけど、それは語れない。


知られたくない。



誰にもーーーー



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