…だから、キミを追いかけて
「悪うない!悪うない!可愛いって意味!」

3つも年上の人つかまえて、「可愛い」は言い過ぎかもしれないけど。

「可愛い言うな!お前もキヨも同じこと言う!」

「澄良も⁉︎ 」

ドキッ…とした。


「澄良からも言われたことあるんだ…可愛いって…」

胸が騒つく。
何⁉︎ この感じ。

「ねぇ、それ、いつ頃のこと⁉︎ 」

気になって聞いた。
ぶすっとしている波留が、唇を尖らせた。


「2年前…祭りの後で肩借りて寝た時……」



ーー昨夜と同じシチュエーションか。
あの時、波留は2時間近く起きなかったと、澄良はこぼしていたっけ。

「居眠りから目ー覚めたらキヨがいて、『子供みたいな顔して寝とったよ。可愛い』って言った……」


照れくさそうな横顔になる。
多分、そこから澄良が好きになったんだ。

「そっか…。そっからなんだ……」

分かる気がする。
世話好きな澄良の困った顔を見て、胸ががキュンとなった…って。


「いじらしい」
「あん⁉︎ 誰が?」
「もちろん、波留が!」

可愛いさ通り越して、いじらしくなってくる。片想いが始まるって、こういうのなんだ……。

「俺をおちょくっとんのか?」
「違う!違う! 感動してんよ⁉︎ 私」


だって、人を好きになる瞬間なんて味わったことないもん。
航のことを好きでいたのも、きっと体を先に許したからで、気持ちが先立つ恋愛なんてしたことないから。

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