…だから、キミを追いかけて
島へ渡ると、波留は普段、観光客の行かない穴場へ行こう…と言いだした。

「穴場⁉︎ そんなとこあんの⁉︎ 」
「あるある!地元のガキしか知らねー場所!」

海斗さんや星流たちともよく行った…と話す。

「へぇー…」

車の行く先を見つめる。
いつも見る景色なのに、全く違って見える。

波留のお陰?
それとも、自分が生き直そうと決めたから?


「………ほらっ、あそこ見てみろや!」

運転手が指差した。

岩壁が大きく削れている。
地表面がボーダーになっていて、まるで、描かれた絵画のようだ。

「すごーい!面白い!」

空き地に車を停め、外へ飛び出す。

ボーダー模様の岸壁は、横殴りに吹いた風が造り出したんだ…と波留は言った。

「だから、俺の中では、ここは風の聖地なんや。今でも強い風が岩を侵食しとる。この壁は、現在も造られ続けとるんや…」

触りながら教えてくれる。


ーーーこの人は不思議な人だ…。
何で私に、こんな事を話すんだろう…。


「……波留って…ロマンチックな人?」

少し試すように聞いた。

「あんっ⁉︎ 俺がロマンチック⁉︎ …んな訳ねーだろ!俺はただ、自分の故郷の良さを威張りたいだけや!」

誇らしそうに笑っている。
どうやら私の質問は、完全に的外れだったみたい。

「ついでだから教えとってやる!ここな、化石も掘れるんぞ!」
「えっ⁉︎ 化石⁉︎ どこどこ!」

壁に近づいた。

< 124 / 225 >

この作品をシェア

pagetop