…だから、キミを追いかけて
知られたくなかった…
ーーー私の流産を知った父は、仕事を放り出してきた。

20年ぶりに、私や祖母と気まずい再会を果たし、手術に立ち会ってくれた。
術後、看護師から部屋に入ることを許された父は、涙ながらに謝りだしてーーーー


「済まなかった……急にユッカの手を離して……」

後悔を口にした…。


父と最後に会ったのは、小学校1年生の時だ。
離婚時の約束で、私が納得するまでは面接を許されていた。


月1回の父との面接は嬉しかった。
いろんな物を買って貰えるし、楽しい場所へも連れてってくれる。
日頃は食べれない美味しい外食。オシャレをしても不似合いじゃない場所へのお出かけ。

田舎もんじゃない……都会もんの自分だと思える日……。


特別な1日は、いつもあっという間だった。
一緒に出かけられる日を、とても楽しみにしていたーーー。


「……いいよ…。恨んでない……」

父の事情も分かっている。
男1人で生きる寂しさ…。

頼りたいのは誰でも同じ。

私も……航に頼っていたから…。





ーーー故郷へ帰ると決めた日、父に荷物の整理を頼んだのは、もしかしたら、幼い頃の腹いせもあったのかもしれない。

急に連絡をしてこなくなった…。

寂しくて……よく1人で泣いた……。



「…お父さん……」


心配そうな顔を見て呟いた…。

……余計な一言までーーー



「…ごめんね……流産なんかして……」


「えっ……⁉︎ 」

ハッとして我に戻った。

マズい!今、目の前にいるのは波留だ…!!


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