…だから、キミを追いかけて
食事が済むと、お風呂にお入り…と言われた。

「私、最後でいいよ。部屋ん中、少し片付けるし…」

理由があって遠慮する。
祖母はまたしても納得のいかない母を宥め、自分が一番先に入ろう…と立ち上がった。


「熱いかもしれんから気をつけて」

母の言葉を、祖母は「分かっとる」と言い捨て部屋を出る。


カチャカチャ…と食器を洗い重ねる私を振り返り、母が愚痴をこぼした。


「ばあちゃんは夕夏に甘いね……まあ今に始まった訳じゃなぁけど…」


昔はこんな愚痴をこぼすような母ではなかった。
何を言われても、ぐっと奥歯を噛み締めるような強さがあった。

「ここはいいよ。私がやる。あんたは自分の部屋をお片付け」

「…うん…ありがと。ごめんね…」

今日、3度目の『ごめん』だな…と思いながら2階へと上がる。
軋む階段の音を響かせて部屋に戻り、パチン…と電気をつけた。



ーー部屋の中には、逃げ出していた頃の思い出があちこちに散乱していた。
その思い出の一つ一つを目に入れなくて済むよう、ベッドの上に転がる。

脱力する体の奥から何かが滲み出る様な感覚があって、慌てて起き上がった。
部屋を出て、廊下の端にあるトイレへと駆け込んだ。

座った途端、下腹部がきゅう…っと痛み、気持ちの悪いものが流れ出す感触がある。
剥がれ落ちる様な痛みに堪えながら立ち上がると、思わず貧血を起こしそうになった。

真っ赤に染まった便器内を見てゾッとする。
この赤色が、ただの生理ではなかった時期があり、それと今とが重なった。
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