…だから、キミを追いかけて
ベッドに潜り込むと、ゾクゾクした悪寒が全身を包む。

熱冷ましを飲んでも直ぐには効かない。
上がりきってからでないと、熱は下がってこない…。

「…寒いか?もう1枚引っ掛けるか?」

祖母がタオルケットを重ねた。

「…あったかい……少し寝る……」


(薄いメイクにしといて良かった…)

そう思いながら目を閉じた。
瞼の裏に残る残像。

…さっきの…波留の驚いた顔だ……。




「ーー 流産なんかして……」

…咄嗟に出てしまった言葉を、聞き間違いだと思って欲しい…。
そして、確かめないでいて……。


(2度と考えたくない……あのことは……)





ーーーうつらうつら…と夢を見た。

歩き始めたばかりの子供を追っかける自分。
背中を向けて走っている子は、

幼い頃の私だろうか……

それとも…

失くした命の幻か………


「待って………離れちゃ駄目だよ……」


手の届かない所へ行かないで…

側にいて…



「独りに……しないで………」


哀しそうな声に目を覚ました。
目の前に広がる部屋の景色。


(良かった……誰もおらん……)


ほっとする…。
さっきの様に、誰かが聞いていたら心臓に悪いーー。



「…夕夏?起きとるか?」

祖母の声だ。

「うん…今、目が覚めた……」

ドアが開く。
和風建築の中でたった一つ。
私の部屋だけは、洋風に改築してくれた…。

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