…だから、キミを追いかけて
フラフラ…しながら部屋に戻り、横になった。

いつまでこんな思いをするのだろうと思うと、自分を呪いたくなる。



もういい加減に忘れたい…。
全て、過去のことだ……。



ブルブル…と、ケータイが揺れ始めた。
それに手を伸ばし、番号を確かめてから通話ボタンを押した。


「もしもし……お父さん?」


3歳で離別してから会うことも殆どなかった父と、この最近電話で話すことが何度かあった。
自分の身に起こった出来事の対処の一部をお願いしたからだ。


「…ユッカか?荷物は無事届いた?」


淀みなく響いてくる声。子供の頃の呼び名で私のことを呼ぶ。凹凸のないイントネーションは、母や祖母とは違う都会の人らしい感じ。

「うん…思った以上に早く着いて。お母さんパニックになっちゃった。でも大丈夫、全部部屋に入れたよ。ごめんね…急な引っ越しを手伝わせて…」

「それは親としては当たり前のことだよ。それよりユッカ、体の方はもういいのか?」

祖母と同じことを聞く。
どれだけ心配をかけたか、それで十分伝わる。


「もう大丈夫。あれから3ヶ月やし…以前と変わらず元気よ…」

地元特有の訛りが語尾に入り、父はくすり…と小さな笑い声を立てた。


「今の言い方、美帆に似てる。やっぱり親子なんだな」
「そりゃそうでしょ。親子だもん…お母さんともお父さんとも……」


離れて暮らしたと言っても、血の繋がった者同士。
私達は、同じ遺伝子を持っている。
< 14 / 225 >

この作品をシェア

pagetop