…だから、キミを追いかけて
「おばあちゃん……お母さんと何か話した?」

出かけに声をかけても無視された…と言った。
祖母は「しようのない子やね…」と、少し呆れていた。

…その上で私の目を見た。
睨む様な目つきは、昨日の母を思い出させた。

「夕夏の流産を黙っとって悪かったと謝った。美帆に言うたらいけん…と言ったのも私やと教えた。美帆は『何でや⁉︎』と怒っとったけど、その理由は自分が一番知っとると思う。…手術に父親が立ちおうた事も話した。その後もいろいろと、世話になっとるんやないか…とも言っとった。……美帆は…悔しそうな顔をしとったけどな……」

引っ越しの荷物を送ってくれたのは父だったんだろう?と祖母は勘を働かせた。

「うん。私に何も出来んかったから、『罪滅ぼしをさせて欲しい…』と言われて…」

償うことなんて何もなかった。
でも、償ってほしい気持ちも確かにあった。

それは否めない。きっと、何処かでずっと恨んでいたーーーー。


「あの人は…『夕夏と美帆を連れて都会に戻りたい…』と言っとったからな。…一人で生きてける様な、強い男でもなかったし……」

初めて聞く父の本心を教えられ、驚いた様に祖母を見つめ返した。
軽く溜め息をつき、祖母は言葉を漏らす。

その言葉の端々に、父や母や私に対しての後悔を滲ませた……。


「……あんたの父親は、この町には不慣れな人やった。線の細い男で、どう見ても漁師には向かんかった。…でも、美帆が好いた人やから仕様がないと結婚を認めた。美帆のお腹にはもう…あんたがいたから……」

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