…だから、キミを追いかけて
「襲う訳ないやん!私はそこまで男に飢えとらんよ!」

いつかは恋もしてみたいと思う。でも、今はそれを焦りたくない。

「波留こそ、飲み過ぎて血迷ったらいけんよ⁉︎ 特に澄良には、手を出さんことっ!」

酷い冗談だと思いながらもクギを刺す。


「…そんな事、する筈ないやろ!」

笑い飛ばす波留の視線が痛い。

ごめんね、波留。……私は、あんたに前を向いて生きてって欲しいの。
誰かの妻になった澄良を、いつまでも想い続けるのは、単なる美徳でしかないから…。

臆病にならないで欲しい。

他の誰かを好きになることを、許せる自分になって欲しい。


そして、語り合おうよ。

相手のどこが好きで、どこに惚れたのかをーーーー




始まって10分後くらいに、島の女子会が作ったというケーキが運ばれてきた。

私達の目の前に置かれ、ロウソクが立てられていく。

「夕夏が27歳で、波留と海斗さんが30歳だから、全部で87本ね!」

澄良が楽しそうに本数を指定する。

「そんなに立てんの⁉︎ 勿体ないよ!こんな綺麗なデコレーションなのに…!」

メロンやブドウ、特産の梨まで乗った四角いフルーツケーキの上に、プスプス…と長さ5センチ程度のロウソクが次々と立てられていく。確実に穴だらけになるであろう表面を見て、思わず目を疑った。


「ええやん!これが毎年の恒例なんやから!」

ほろ酔いながら、星流がロウソクに火をつけ始める。明明と灯されたケーキの上は、もはや火の海に近い状態だった。

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