…だから、キミを追いかけて
「早う消してよ!今年のは自信作なんやから!」

那海ちゃんが叫んだ。
澄良達に促されて、私が火消し役をすることになった。


「じゃあ消すよ⁉︎ 」

海斗さんと波留を振り返る。
頷く二人を見定めて、私は願い事を祈った。

「この町の海と人が、いつまでもこのままであります様に…!」

フーーッと息を吹き続けて、なるべく多くのロウソクを消そうとしたんだけど……

「無理っ!一息じゃとても消しきれん!」

手伝って…と波留を手招いた。
渋々と側へ来た波留が短く息を吹き続ける。
1本1本消えていく炎に、願い事へのカウントダウンが始まった。


「ラストの1本は2人で消したら?」

澄良が提案した。

「えーっ⁉︎ 波留とー⁉︎ 」

嫌そうな顔をする私を、彼がぐいっと引き寄せた。

「嫌がっとらんと、願いを込めろ!ええか⁉︎ いくぞ!」

『せーのっ!』……


皆の掛け声に口を窄めた。

ふぅ…と細い息を吹く波留の顔を見つめる。
唇だけは細めても、息は吹かず彼に任せた。

白い煙を揺らして炎が消える。
揺らめく煙の行く先を見守る波留に、いい恋が訪れますように…と願った。



ケーキを切り分けて、皆で食べ合わせ始めた。

島の若い人達は仲がいい。
限られた生活空間で暮らしてきたせいか、まるで全員が兄弟姉妹のような感じだ。


「……澄良は島に嫁いできて幸せ?」

山間の農家で生まれ育った彼女に尋ねた。


「うん!幸せよ。…でもね……」

< 157 / 225 >

この作品をシェア

pagetop