…だから、キミを追いかけて
ケーキを食べ終えて外へ出ると、波留が1人でバルコニーにいた。

「何しとん?…1人で…」

座っている丸テーブルに近づいた。


「そっちだって1人やろ…」

そっぽを向きながら答えが返ってくる。
あの電話以来、久しぶりのまともな会話。一体、何を話せばいいのだろう。


「……今日……呼んでくれてありがとね……」

澄良から聞かされた理由を思い出した。
私の誕生日も祝おう…と、波留が大はりきりだったとーーー。

「あ?…ああ…別に……」

大した事をしているつもりはないみたい。
珍しく元気のない波留に、軽い疑問を覚えた。

「……なんか、今日は元気ないね……」

呟く私を振り返る。
真顔になっている波留の眉が、きゅっと寄った。

「お前に言われたかねーよ!この間の電話なんか、明らかに変だったじゃねーか…」

拗ねたような言い方をする。
唇を尖らせ、挑むような目つきで、こっちを見ている。
ギクリ…!とする私は躊躇って、それでも本当のことは話せないと思った。

「…あん時は、風邪ひいてまだ熱もあったし……喉も痛うて声が出しにくいから、話したくなかったんよ…!」

完全な嘘。でも、こればっかりは話したくないから仕方ない。


「ふぅん……風邪のせいか……」

納得いかないように呟く。
波留の前に置いてあるグラスから、細かい泡が弾けていく。
彷徨うように視線を惑わせてから、バルコニーの手すりに近づいた。

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