…だから、キミを追いかけて
乱暴な言い方をして、素知らぬ顔をしようとする。
明らかに知り合いみたいな感じの女性は、私を振り返って聞いた。

「どなた?」

戸惑いながら、名前を名乗った。

「篠原夕夏と言います…」

「誰なん?」と波留を突いた。
バツの悪そうな感じの波留は、ボソッと小声で囁いた。


「……姉貴や」

「へっ⁉︎ 」


まさか……と、反転。
目を向けた先に立っている女性は、にこやかな笑顔を浮かべていた。

「ヒェーッ」と声に出しそうになって、慌てて口を噤んだ。直立不動なまま、カクンと首だけうな垂れた。


「…波留の彼女?あんたが女子連れて来るなんて、初めてやもんね」

ニコニコしながら近づいてくる。

違う…と言おうとする私を、波留がす…っと手で止めた。
振り返る目が、黙っとけ…と言っている。
どうやらお姉さんのことは苦手なようで、言う通りにしとけ…と言いた気だった。

近くにきたお姉さんも背が高かった。ぱっと見、170センチは確実にある。

「初めまして。波留の姉で、里海(さとみ)と言います」

黒い瞳が瞬く様に輝いている。白く透けたような肌は、本当に姉弟なんだろうか…と疑いたくなる程だ。


「…もうええやろ。邪魔すんな!」

背中を押され、展示室に向かう。
ガラス張りのショーケースの中には、さっき波留が説明してくれた生物達の化石が飾られてある。
その一つ一つを眺めながら、落ち着かない胸の動悸を聞いていた。

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