…だから、キミを追いかけて
すっぽりと両手に包まれる貝を見て、思ったことを口にした。

「…波留は海が好きなんやね。いろんな事知っとんのも、人一倍興味があるからやろ?」

貝にしても海藻にしても、海が好きでなければ名前まで覚えない。
……きっとここに何度も通っている。
女子を連れて来たのは、私が初めてだとしても……。


「…波留のおかげで私、この間から新発見ばかりしとる……」

父の気持ちや母の気持ち。いろんなことを含めて言った。

「ありがと。…この町に生まれて良かった…って、この最近、ずっとそう思うんよ……」


素直な気持ちだった。

柔らかい表情をしているような気がする。声のトーンもいつもより明るいーーー。



「気色悪っ!」

寒気がする…と、波留が自分自身の身を包んだ。

「お前、今日は飲み過ぎなんやないか?絶対、酔っ払っとるやろ!」

海にでも入って来い!…とふざける。


「酔っとらんし!飲み過ぎてもおらん!」

茶化す波留にぶーたれた。

「もうええわ!人がせっかく感謝しとんのに、そんな態度ならもう言わん!」

化石タッチもそこそこに展示室を出る。広く作られたホールでは、島の映像が映し出されていた。



ーーこの間、波留に案内された岩山や風化して作られた岸壁の映像が流れている。

他にも見たことのない場所が映し出される。



そして、あの灯台もーーー……



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