…だから、キミを追いかけて
「……でも、待ってよ……」

はた…と気づいた。

「…夜は灯台上れないやん!」

17時で扉は閉まってしまう。現実的には無理な話だ。

「そうや。やから『縁切り灯台』って言われとるんや」

分かったか⁉︎ と念を押される。

「分かったよ。分かったけど……」

だったらどうして、私と上るのを拒否するの⁉︎
私達、カップルでも何でもないよねぇ⁉︎

疑問を投げかけようとして波留を振り返った。

背の高い、逞しい体つきの人が、私の視線に気づいて見下ろす。



ーーーこの人との縁が切られるーーーー




(それは……ヤダ……!)




「…ねぇ、波留……」

喉元まで出かかった言葉を言うべきかどうか躊躇する。
深い意味はない。

自分はただ……あの灯台の上へ上りたいだけだ…………。




「あのさ……満月の夜でいいから、一緒に上ってくれん?言い伝えとか昔話とか関係なしに…彼処から海を眺めたいんよ……」

懇願に近い。
上れるかどうかも知らないのに、心から波留に願った。

呆然…とした顔で見つめられる。
日焼けした顔にポツポツ見えるそばかす。
その鼻先を擦るようにした波留が、ふぅー…と深い息を吐いた。


「……そんなに言うなら上ったる。縁が切られるのはご免やけど、切れん方法があるならそっちを選択すんのは間違いやない」

ただ、夕夏と…というのがなぁ…と呟く。
嫌そうではないけど、何だ。その言い草は。

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