…だから、キミを追いかけて
「あのね、今も言ったやろ⁉︎ 言い伝えとか昔話に関係なくって!そんなのに一々左右されんとって!」

私だって、恋人がいたら波留となんて…と呟き、ハッとする。

恋人はいたんだ。
ついこの間、スッパリ別れたけど………。



見下ろす波留の視線に気づいて、笑って誤魔化した。

マズいマズい。波留は知ってるんだ。


私がーーー

流産したことーーーーー




「…じゃあ…店に戻ろうか!私はいつでもいいから、波留の都合のいい時に連絡してきて…」


くるり…と反対を向いた。
歩き出そうとする私の手首を、波留がグイッと引っ張った。


「待てっ!」


ドキン……!と心臓が跳ね上がった。



振り返る先にいる人が、重たい口を開いて聞いた。



「この間言っとったこと本当か?……流産した…ってーーー」




ーーーああ、とうとう聞いてきたか…と覚悟した。

波留には教えたくなかった。

だけど、もう…隠しておけない………。



「うん……4ヶ月近く前。……妊娠7週目に入ったばかりだった………」


きゅっと唇を噛みしめる。

もう怖れない。
私はこの体験を通して、如何に自分を大切にしなければならないかを知ったからーーー。




「……相手はどうしたんや」

兄の様に、心配そうな顔つきで聞かれた。
その複雑そうな表情に、ふっ…と笑って見せた。

「別れたよ。……この間の…盆祭りの日に……」


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