…だから、キミを追いかけて
「本当は……誰にも言いたくなかったんやけど……あん時の波留の顔が、お父さんに見えて……つい、口走ってしもうたわ……」

驚かせてごめん…と謝った。

波留は無言のまま、私の後ろをついてくる。
何も言われないのは辛い。
でも、何かを言って欲しくもない……。


「この町に戻ってきたばかりん頃、時間が止まっている様な気がして苦しかった…。哀しくて、すごい虚しくて……鬱っぽくなっとった…。感情がコントロールできんで、急に泣き出したり、怒りっぽくなったりして………思い当たる節、あるやろう?」

少しだけ振り返る。
頭の先だけ見える波留が、「あるな」と短く答えた。

「……でもね、あの熱が出た時、お母さんからお父さんとの結婚話を聞いたんよ。私の両親は結局、別れたんやけど、今もお互いを思い合っとって、素敵やな…と思うた。だから今度は、自分もいい恋愛をして、両親みたいに別れない結婚がしたい。大好きな人の子を産んで、育てていきたいと思う。……この町でーーー」


大好きな海と空が開ける町ーーー


過去の命が息づく町ーーーー



私のーーー



大好きな場所ーーーーー






「………そっか…」


納得したように波留が頷いた。
何処か笑いを噛みしめている様な気もする。
だけど、今はいい。気にしない。


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