…だから、キミを追いかけて
「あいつは毎年、この日が夜勤明けやけぇ…来るとしても、終わり頃やないか?」
「そうよね。夜勤明けでリレーだけ参加して…」

酒盛りには参加せず、一眠りしてくるのが通例らしい。


でも、今年はーーー




「…波留っ!」

目を丸くして佳奈さんが驚いた。
白いTシャツに黒いジャージズボンの波留が、首に水色のタオルを巻いてやって来た。


「俺の分の酒、ある?」

輪の中に割り込む。
隣のおじさんから渡されたコップに、なみなみとビールが注がれた。

「飲め飲め!よう来たな!」

星流のお父さんは上機嫌。
どうやら星流のことよりも、波留の方がお気に入りみたいだ。

「疲れとるんやない?昨夜はボヤもあったようやし…」

佳奈さんがおかずの取り皿を渡した。

「あれは大したことなかったわ……野焼きの消し忘れ。風も吹かんかったし、大火になる前に消せた……」

割り箸を歯で割り、どれを取ろうか迷っている。
こんなのを祖母が見たら間違いなく怒る。箸の使い方も食べ方も、人一倍煩い人だから。

「これ食べてみてよ。私が作った南蛮漬け…」


目の前に差し出した。
あれ⁉︎ …って顔される。

「…お前、なんでここにおるんや?」
「なんで…って、昨夜からお弁当作り手伝っとったから。南蛮漬けと唐揚げ担当。美味しいよ!」

自画自賛してみせる。
皆、酔っ払ってて、まともに味の判断できる人がいないから。

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