…だから、キミを追いかけて
「ほらっ、上るぞ!お前が先行けっ!」

波留がせっつく。

「えっ⁉︎ なんで私が先に上るん?」

初めてなのに…と疑問に思った。

「途中で気絶した時、支えなならんやろ⁉︎ 」

波留が理由を述べる。

「其処まで怖がりじゃないよ。私は…」

少し呆れた。

「そうか。なら一人で上れや」

ツレなく引き下がる。


「嫌よ!初めて上るのに……何かあったら困るやん!」

「やから俺が後から行くんやろ!つべこべ言うとらんと早う上れ!足元急やから気ぃつけろよ!」

ヘッドライトで階段を照らしながら、少しずつ急な螺旋階段を上っていく。



最初はまだまだ余裕があった。

でも、途中から、絶壁を上るような急勾配が続き始めた。



「何これ!殆ど垂直やん!」

角度が90度に近い。梯子みたいな階段は、爪先がやっと乗るくらいの幅しかない。


「やだっ!怖すぎる!!」

足が震えだす。
上も下も見れない。目の前の梯子の板を見るだけで、精一杯な状態だ。


「怖い言うても、引き返せんぞ!行きより帰りは、もっと恐ろしいんやから!」


波留が足元から脅す。
それならそうと何故先に言わない⁉︎
そしたら、上ろうなんて、絶対に言わなかったのに……。



「駄目っ!足がすくんで動けん…!」


ギャーギャー騒ぐ私を見て呆れる。
目の前に頂上は見えているのに、完全に足がストップしてしまった。


「仕様がねぇな…」

波留が下から近づいてくる。
暗闇の中で私の足を持ち、「ほらっ!」と上の段に押し上げた。


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