…だから、キミを追いかけて
骨から身を外すのは特に好き。
イキの良さも身の外れ方一つでわかるようになった。

「私、おばあちゃんのおかげで、魚の食べ方にだけは自信があるわ」

そう話すと祖母は、「そうかい、そりゃ良かった。厳しく躾けた甲斐があるね」と笑った。

二人だけの食事が済むと祖母は洗い物をし始める。
その間、自分は部屋の片付けをした。


高校生まで使っていた本棚に段ボール箱の中身を並べる。
数えきれない程のマンガ本に呆れながら、その中に混ざった数冊の本を見つけた。


『創作折り紙』ーーー

最近は全くしなくなった。
そんなことをしてる心の余裕がまるでなかった。

ペラペラ…とページを捲ってみる。
でも、すぐに閉じた。

……紙を折らなくなったのには訳がある。
けれど、今はそれを思い出したくもない。

窓を開けて潮風を入れた。
さざ波の音はどんな曲よりもいいBGMになる。

黙々と身体を動かす。
それが一番の気分転換。



ーーお昼近くになると、母は一旦帰ってくる。
せかせかとお昼の支度をし、一番最初に自分だけが食べ始める。

こんな生活を何年も続けている。けれど、それを不思議だと思ったこともない。


「一人で食べるのって、淋しくない?…」

ついつい聞いてしまった。
母は急いで食べている手を止めて、私の顔をまじまじと眺めた。


「あんたの口からそんなこと聞いたん初めてやね…」
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