…だから、キミを追いかけて
珍しい…と笑われた。
自分でもどうしてそんなことを思ったのか、その理由が分からない。


母は箸の手を止め、少し考えるような間を空けてから返事をした。


「淋しいとか何とか、そんな感情持ち合わせんようにしとるよ。でも、誰かと一緒に食べれるならその方がきっと美味しいし味もするね」

本音を話す母の顔を見つめた。
そんなふうに思っていることを、今日まで何も知らなかった。


食べている間だけでもいいから側にいよう…と決めた。それで親孝行に繋がるなら、そうしていよう…と思った。


昼ご飯を食べながら母は自分が働いている旅館の女将さんに、私みたいな若い子が働ける所はないか聞いてみる…と話した。


「…働く気、まだないけぇ……」

そう断っても、母は聞くだけはタダやろう…と押しきった。
そんな頼んでもいないことする時点でお節介なんだというのを知らないからこの土地に居られるんだと思う。



ーーほっといて欲しかった。

その方がずっと気が楽だ…。




ーーこの田舎に居続けられる人は強い。

お節介が沢山いる場所。
人の顔を見れば話しかけずにはいられないみたいに寄ってくる。
現にこの日も外を歩いてるだけで呼び止められた。



「あれ〜、篠原さんとこの夕夏ちゃんでないの!」

よりにもよって近所で一番のお喋りおばさんだ。


「こんにちは…」

後ずさりしたくなる気持ちを抑えて微笑む。
心の中では拒絶信号が点滅しだす。
早く逃げだしたい。あれこれ聞かれる前に……。
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