…だから、キミを追いかけて
同じ日に生まれた友人の妻で、私の高校時代の仲良しでもある澄良が、波留と出会った頃、お互いフリーだった筈なのに、どうして波留は、澄良を海斗さんに任せてしまったのだろう……。
島で暮らすことも、仕事の内容も、何一つ取っても、お互い大差は見当たらないのに……。


空しい気持ちを抱えたまま、新しい仕事を見つけに行った。町内にある市役所の出張所には、職安の就職案内が置いてある。
掲示板に貼られた求人案内を眺める。
町内で募集している求人は、介護施設の職員か栄養士か看護師。後は土木作業員くらいで、これと言って、やってみたいと思う仕事も、やれそうな仕事も見つからない。

溜息しか出てこない状況に、介護の仕事でもするべきか…と思いかけていた時ーーーー




「……夕夏やないか!何しとんか⁉︎ こんなとこで」

聞き覚えのある声に驚いて振り向いた。視線の先に、消防の制服を着た人が立っている。

「……偶然やな!」

いつもと同じ口調で、こちらに向かって来る。ブルーグレーの制服がよく似合う人は、同系色の帽子を深めに被り、半分くらい顔を隠していた。

「……なんで、此処に居るん?」

近づいてくる人に尋ねた。こちらからも寄ろうとする足を止める。昨夜のことが頭に浮かんできて、側に寄るのを躊躇った。

「仕事場が近いけぇ…ちょっと用事。お前はなんや?就職案内眺めてたんか。…ええ仕事見つかったか?」

やっぱりな態度で接してくる。
自分からキスしてきた相手は、呑気に私の見ていた掲示板に近寄った。

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