…だから、キミを追いかけて
「こっちに帰って来たんだってねぇ!お母さん言うとったよ…仕事場が閉鎖になったからって。 世の中不景気なんだね〜」

矢継ぎ早に飛び出す言葉にウンザリする。
何も知らずに嘘を信じている。そして、それを周りに言いふらす。


「はい…本当に…」

不景気という言葉にだけ焦点をあて返事をする。
嘘はついてない。少なくとも、このおばさんにだけは。

「仕事口ないかねぇ…って心配しとった。この辺にはあるって言うても老人ホームくらいだからねぇ…」



……老人ホーム。

嫌な言葉だ…。


「島へ行けば何かしらあるかもしれんけど…最近は島の若いモンが結構頑張っとるって聞くし。でも、また島だけが潤うのもどうかと思うしねぇ」


……心が狭い。
そんなふうに思うなら、口にしなければいい。


「まだ帰ってきたばっかやけぇ、もう少しのんびりしてからでいいと思っとるんです。仕事探しは…」

当たり障りなく返事しておこう。

ーーー構って欲しくない。このおばさんには関係がない。


「そいじゃあ、またええ所あったら紹介するわ」

遠回しに遠慮しておく…と言ってるのに伝わらない。
どこまでも自分勝手。どこまでもマイペース。


……グッタリと疲れながら家へ戻った。
気分転換…と外へ出かけても、その方が疲れるとはどういう訳か…。


「……出かけてくるわ……」

車のキーを持って出た。
何処へ行くにも車が一番。

一人きりになれるから。
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